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横浜地方裁判所 昭和39年(ワ)458号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕別紙目録記載の本件土地が訴外人三名の共有に属すること、本件土地について、昭和二七年二月二六日に、原告が訴外人三名の前主たる八木庄兵衛を相手方として原告の賃借権保全のため申請した、横浜地方裁判所昭和二七年(ヨ)第七五号不動産仮処分事件の仮処分決定による処分禁止の仮処分登記が経由されていることは、当事者間に争いがない。

そして、<証拠>を合せ考えると、原告は本件土地について堅固ならざる建物の所有を目的とする賃借権あることを主張して、訴外人三名を相手取つて賃借権確認訴訟(当庁昭和三〇年(ワ)第二九六号賃借権確認等請求事件)を提起して、勝訴判決を得、次いで控訴審において本件土地の引渡しを併せ求める旨請求を追加して(東京高等裁判所昭和三一年(ネ)第一六七一号、同年(ネ)第七五七号、同年(ネ)第一九九三号借地権確認等請求控訴事件、この訴訟係属の点は争いがない)、昭和三六年一二月二六日、右賃借権の存在を確定し、かつ原告が横浜市長から本件土地についての換地処分による権利指定の通知を受けたときは、訴外人三名は原告に本件土地を引渡すべき旨の、仮執行宣言つきの勝訴判決を得たこと、次いで原告は、昭和三七年六月六日付で横浜市長から本件土地について土地区画整理法の規定による仮換地権利指定の通知を受けたので、同月二三日右の仮執行宣言つき判決に基いて、横浜地方裁判所執行吏に委任して、強制執行により本件土地の引渡しを受けたことを認めることができる。

一方、本件土地について、昭和二九年四月八日付で被告のためその主張のとおりの賃借権設定登記がなされていることは当事者間に争いがなく、この事実と証人八木弘治の証言とを合わせ考えると、当時訴外人三名は本件土地を原告に賃貸したはずはないと考えており、訴外人三名が依頼していた正木晃弁護士の意見を聞いたところ、差支えなしと言われたので、被告主張のとおりの約定で本件土地を被告に賃貸する旨契約したことを認めることができる。

そして、原告主張の(二)および(三)の事実は当事者間に争いがなく、また本件土地は米国駐留軍により接収されていて、昭和三一年に接収を解除されたこと、その後八木弘治が本件土地を株式会社野沢屋に建築材料置場として一時貸しをしたことも、当事者間に争いがないが、<証拠>を合せ考えると、本件土地共有者の一人である八木弘治は、原告が前認定のとおり強制執行によつて本件土地の引渡しを受けたことを知らずにいたが、昭和三七年六月二三日たまたま本件土地の傍を通りかかつてきれいに片付けられているのを見て、同日株式会社野沢屋に電話で問い合わせたところ、本件土地は必要がなくなつたから返還する旨の返事を受けたので、翌二四日、さきに賃貸の契約をしていた原告に連絡して、本件土地を引渡すことにし、原告の依頼で本件土地の周囲に有刺鉄線を張り、「志摩仁男建築用地」なる立札を立てたこと、右有刺鉄線や立札はその後間もなく原告によつて撤去されてしまつたこと(この点は争がない)、そこで被告は、自己の賃借権保全のため本件第一の仮処分の申請をしたが、その審理係属中に原告が本件土地に建築をはじめたので、これでは目的を達することができないと考えて右第一の仮処分(編注・占有移転禁止の仮処分)申請を取下げ、続いて本件第二の仮処分(編注・工事禁止の仮処分)の申請をしたこと(編注・却下決定により終了)、原告と訴外人三名間の前記借地権確認等訴訟事件は、昭和三七年一月二六日訴外人三名からの上告が受理されて、当時なお上告審に係属中であつたことを認めることができ、他に右認定を動かすに足る証拠はない。

以上認定の事実関係のもとにおいては、被告が本件第一および第二の仮処分の申請をしたことは、必らずしも原告の主張するように、被告が本件土地については何の権原もないことを承知のうえで、あえて原告の権利行使を妨げようとした不法な行為であるということはできない。けだし、原告と訴外人三名間の本件土地についての借地権確認等訴訟事件は、第一、二審において訴外人三名が敗訴してはいるけれども、当時なお上告審に係属していて未確定であり、訴外人三名の勝訴の見込みが全く失われてしまつていたわけではなく、もし最終的に訴外人三名が勝訴するにいたるときは、原告は本件土地について賃借権を有しないことが、原告と訴外人三名との間で確定され、原告のため本件土地についてなされた処分禁止の仮処分登記が抹消されるにいたる見込みが、必らずしもなかつたとはいえないばかりでなく、仮りに上告審においても訴外人三名敗訴の結果に終つたところで、原告が本件土地について借地権をもつていることは、原告と訴外人三名との間で既判力をもつて確定されるだけであつて、その既判力は被告には及ばないのであるから、先に原告のための処分禁止の仮処分登記が経由されていたにせよ、被告はなお本件土地について登記を経た賃借権者として、原告を相手取つてその賃借権の存否を争う余地を残されていたわけであつて、かような立場にある被告が、原告との間で賃借権の存否が未だ確定されていないにかかわらず原告が本件土地の占有をはじめて建物建築に着手した以上、自己の賃借権保全のため、原告を相手取つて本件土地の占有移転禁止を求める仮処分ないし建築工事の禁止を求める仮処分を申請することは、必らずしも不当とはいえないからである。

もつとも、被告が右訴訟事件の結果とは別個に、原告との間で本件土地賃借権の存否を争う訴訟を提起したところで、右の原告と訴外人三名との間の訴訟事件の経過にかんがみ、被告の敗訴に終る蓋然性が多く、然るときは、原告のした処分禁止の仮処分登記が先行している以上、被告の賃借権は原告に対抗することができない結果になるといえるかもしれないが、被告に自己の権利主張の途が全く閉されていたわけではなかつたのであるから、やはり被告が不当に自己の権利を行使して、理由なく原告の本件土地に対する権利行使を妨げようとしたとはいえないであろう。

してみると、被告が本件第一および第二の仮処分を申請したことが、原告に対する不法行為に当るということはできないから、この点原告の主張は失当である。(石沢健)

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